京都大学呼吸器外科では、呼吸器外科専門医を目指す後期修練医、専攻医(医員)を募集しており、そのトレーニングに精力的に取り組んでいます。日本国内はもちろんのこと、海外でも活躍できる人材の育成を目指して、そのトレーニングを提供していることを自負しています。
毎週の放射線診断科との画像カンファレンス、呼吸器内科や放射線治療科との合同カンファレンスへの積極的な参加により、術前診断と手術適応を考える機会を提供しています。ほぼ毎週行われている、スタッフによるレクチャーシリーズによる講義により系統立てた知識の整理をしていただくように心掛けています。健診発見の肺腫瘤から、複雑な経過を辿る肺陰影、ハイリスクなバックグラウンドを持つ患者さんなど非常に多岐にわたります。さらに肺移植適応評価の患者さんの受け持ち機会も多くあり、バラエティに富んでいます。また、希望者には初診外来や他科からのコンサルトにも積極的に参加していただく方向で検討中です。
経験豊富なシニアスタッフによる充実したトレーニングを提供します。ドライラボトレーニングのみならず、ウエットラボトレーニングも活用します。具体的には、手術手技のトレーニングは、各人の成熟度に合わせてシニアスタッフによるハンズオントレーニングが行われています。また同門会のサポートを得て、年2回定期的に大動物を用いた少人数制の手術トレーニングを開催して、好評を得ています(詳細はこのホームページ内の手術手技セミナーの箇所を参照ください)。専門医試験受験に必要な症例を担当できるように、シニアスタッフがモニターしています。特に京都大学呼吸器外科では、胸腔鏡手術、ロボット手術だけではなく、他科と合同の手術、拡大手術、(脳死・生体)肺移植も多く経験できる環境があります。全身麻酔下の手術以外にも、EBUS(約70件/年)を含めた気管支鏡、CVポートとPICC留置(約20件/年)、経皮的気管切開術(約5件/年)の手技の習得も可能です。たとえば2016年度医員の、年間手術経験数は1人当たり90〜120となっており、この経験数の多さは京都大学呼吸器外科の誇りです。
スタンダードな呼吸器外科手術の術後管理に加えて、肺移植術後のICU管理も担当医が中心になって行っています。ほぼ毎週行われている、スタッフによるレクチャーシリーズによる講義により、「習うよりも慣れろ」式の術後管理ではなく「習いつつ慣れる」術後管理の教育を行っております。月1回のMortality and Morbidity カンファレンスを通じて、術後合併症への対応もしっかりと身に付けて頂きます。
シニアスタッフより与えられたテーマで、全員が年1回のリサーチデイにて研究成果を発表しています。学会発表では毎年、例えばAATS(American Association of Thoracic Surgery)やESTS(European Society of Thoracic Surgeons)を含めた海外の学会で口頭発表し、関連雑誌に論文もアクセプトされています。当科では、日常臨床を重要視しており、自分が受け持った症例に対して、和文だけでなく、英文でcase reportを書くことを奨励しています。
もちろん、書き方の「いろは」から丁寧に指導します。論文を書くことは、呼吸器外科学上、興味深い点を見つけたり、自らの知識を整理するだけでなく、peer reviewを受けることで、自分の考えや書いた文章を批判的にみる、良い訓練になります。また、case reportだけではなく、original articleを英語で執筆するトレーニングを積極的に提供しており、忙しい間を縫って取り組んでいただいています。
年1回のリサーチデイでの発表に向けたシニアスタッフの継続的な指導があり、それを英文論文として仕上げる流れがあります。 JTCVS, ATS, EJCTS, ICVTS, EJSO, PlosOne, Sci Repといったimpact factorのある雑誌のReviewerをしているスタッフからの実践的なアドバイスがあります。 医員同士が切磋琢磨する環境があります。 京都大学呼吸器外科で初めての英文論文を書く医員がほとんどなので、予備知識や経験は全く求めておりません。 臨床研究における重要なポイントである統計については、基礎的な項目は部内で指導し、応用的なものはコラボしてきた統計専門家の指導を仰ぐ体制を取っているため、論文の査読への対応も安心です。参考までに2016年の医員と大学院生の論文リストを示します。
医学英語の上達には、適切なトレーニングが必要です。当科には研究・臨床共に海外留学経験のあるスタッフが多く勤務しており、医学英語を学ぶ環境も整っています。英語での質疑応答や発表を学ぶためのEnglish カンファレンス、専門医試験を意識したレクチャーシリーズ、臨床留学英語を学んでいただくミニレクチャーも行って参りました。希望者には海外の臨床及び研究施設の見学も紹介します。また常時5-10名の医局員が、海外に留学しております。
2007年から約15年間継続されてきたEnglish conferenceは、外国人医師・外国人研究者・欧米留学経験のある他科の医師を中心に、さまざまな年代・バックグラウンドを持つ延べ70人以上のspeakerを招いてきました。 内容面では、臨床及び基礎の最新の研究内容から留学での苦労話、留学サバイバル術、あるいは国際学会発表のコツや英語勉強法まで多岐にわたります。 オーディエンスも、最近では呼吸器外科医師・大学院生のみならず、他科の医師・研修医・医学生・薬剤師の方にもお越しいただいております。聴講をご希望の方はthoracic@kuhp.kyoto-u.ac.jpまでご連絡ください。
当科では呼吸器外科に興味のある医学生を対象に、病院実習を行っています。
実習では、実際に手術や回診・診療カンファレンスに参加して、少しでも多くの方に呼吸器外科に興味を持ってもらいながら、胸部X線やCT読影の基礎を身につけてもらいます。 自分が担当した患者さんについて、コンピューターでcase presentationのスライドを作成してもらうのも大切な作業です。
当科の対象疾患は肺癌、縦隔腫瘍をはじめとする腫瘍性疾患のほか、自然気胸、膿胸、胸部外傷、漏斗胸など呼吸器外科領域全般にわたります。また、京大病院は、脳死肺移植実施施設として認定された全国で4施設のうちの一つであるため、肺高血圧症、肺線維症、肺気腫、肺リンパ脈管筋腫症、気管支拡張症などの肺移植対象疾患の診療も行っています。
当科では、多くの医局員が大学院へ進学し基礎研究を行っています。
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