肺移植における疫学研究@
我々京都大学呼吸器外科では、肺移植の発展とその成績向上を目標に、当院が中心となり本邦における肺移植症例について、以下の様な疫学研究を行い、その詳細につき情報公開しております。
研究名:「肺移植後の抗HLA抗体の推移と慢性移植肺機能不全の研究」
1.研究の意義
肺移植は内科的治療が尽くされた慢性呼吸不全患者に対する最後の治療として、本邦でも確立された治療となりました。実際、今日までに、約500例の肺移植が本邦で行われています。しかしながら、そのうちの半数程度が、健常人をドナーとする生体肺移植であり、本邦における脳死ドナー不足は、未だ深刻な問題です。一方、生体肺移植においては、現在、本邦が世界の中心となっており、生体肺移植の種々のデータを検討し、発表する意味は、医学的のみならず、学問的にも非常に大きいと考えられます。
肺移植は、外界と通じる臓器であるため、免疫機構が発達しており、拒絶のリスクが潜在的に高く、移植されたグラフトの長期生着の比率は、他の固形臓器移植より低いのが実情です。肺移植の慢性期の死亡原因は、拒絶反応を中心とした慢性移植肺機能不全(chronic lung allograft dysfunction: CLAD)であり、このCLADの克服は最優先の課題です。また、腎臓移植などの他の臓器移植と同様、近年、肺移植においても、ドナー特異的抗体(DSA)を含めた抗HLA抗体の重要性が認識されています。
こうした中、肺移植後の抗HLA抗体の推移をモニタリングすることやCLADとの関係を検討することは、肺移植後のグラフトの長期生着に寄与し、さらには、移植患者さんの生存率向上につながると考えられます。また、生体肺移植と脳死肺移植において、その頻度や特徴につき検討することは、医学的のみならず、学問的にも意義があると考え、本研究を考案しました。
2.研究の目的
本邦における肺移植の実態を理解するために、これまでのデータを集めて、検討します。
3.研究の方法と研究機関名
2000年1月から2018年7月までの期間に、京都大学で施行された肺移植症例について、カルテなど既存の資料のみを用いた追跡による研究を行います。
4.研究実施期間
倫理審査承認日から2020年7月末まで
5.利用する試料・情報の項目
カルテなど既存の資料のみを用いて、後方視的に調査する。
主要な観察項目を以下にのべる。
1)基本統計(ドナーおよびレシピエントの性別、年齢、既存疾患など)
2)術前データ(抗HLA抗体など、組織適合性検査の結果)
3)肺移植手術データ(術式、出血量、手術時間、グラフト虚血時間など)
4)肺移植の術後経過と予後(生存期間、合併症、死亡原因など。抗HLA抗体の推移や、呼吸機能、画像などCLADの判断になる資料など)
6.個人情報の保護
この研究で得られた個人情報が外部に洩れることのないよう厳重に管理致します。本研究における各患者番号を新たに付し、患者さんの氏名やカルテ番号など個人が特定できるものはデータ管理において記載されません。また、研究成果の発表にあたっては、患者さんの氏名などは一切公表いたしません。
データの保管期間に関しては、本研究結果をもとに、今後、発展的な研究実施(本研究データの二次利用)の可能性があるため、論文化から少なくとも10年以上は厳重に保管させていただきますことをご了承ください。また、データを二次利用する際は、新たに倫理委員会で承認を受けた上で、再度研究への参加の意思を確認させていただくことになります。
また、本研究にデータを使用してほしくないという希望のある患者さんにおいては、ご希望に沿いたいと思いますので、以下の連絡先にご連絡いただければ、対応させていただきます。
さらに、本研究において、患者さんに、追加の費用負担は一切発生しませんし、謝礼もございません。
また、本研究は、倫理審査委員会の審査を受け、研究機関の長の許可を受けています。
本研究に対するご質問、ならびに、個人情報に関する問い合わせや苦情等については、以下の窓口にて、対応させていただきます。また、本研究の研究計画書および研究の方法に関する資料の入手・閲覧をご希望される場合は、下記窓口にご連絡ください(ただし、他の研究対象者等の個人情報及び知的財産の保護等に支障がない範囲内に限られます)。
連絡先:京都大学呼吸器外科 (研究責任者 陳豊史)
住所:606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 医局
電話:075-751-4975
FAX:075-751-4974
連絡先:京都大学医学部附属病院 相談支援センター
電話:075-751-4748
E-mail:ctsodan@kuhp.kyoto-u.ac.jp