造血幹細胞移植後の肺障害に対する肺移植の研究
肺移植における疫学研究
我々京都大学呼吸器外科では、肺移植の発展とその成績向上を目標に、当院が中心となり本邦における肺移植症例について、以下の様な疫学研究を行い、その詳細につき情報公開しております。
研究名:「造血幹細胞移植後の肺障害に対する肺移植の研究」
1.研究の意義
骨髄移植や末梢血幹細胞移植などの造血幹細胞移植は、大きな進歩を遂げ、白血病やリンパ腫などの血液悪性疾患に対する治癒率は向上しました。その一方で、近年、原病は、寛解を維持しているのに、造血幹細胞移植による合併症としての慢性期の肺障害に悩まされる患者さんが増加しています。このような肺障害には様々なパターンが存在しますが、悪化すると、肺移植でしか救命することはできません。しかしながら、このような造血幹細胞移植後の肺障害に対する肺移植は、患者さんの術前状態が重篤なことが多いため、肺移植の適応になることが少なく、また、肺移植後の成績が、他の疾患よりも悪いと、国際的には考えられています。実際には、このような患者さんに対する肺移植は、国際的にもあまり行われておらず、正確なデータが全くない状態です。
一方、日本では、このような肺障害に対しても積極的に肺移植が行われており、世界的にも、日本での経験例が世界最多であることがわかっています。そこで、このような肺移植の実態を世界に先駆けて検討することは、今後増え続ける造血幹細胞移植後の肺障害患者に対する正しい理解とそれに基づく医療の発展という意味で意義があると考え、京都大学呼吸器外科では、日本の肺移植実施施設に呼びかけて、本研究を行うこととしました。
HSCT後の肺障害のタイプや予後、さらには、肺移植の成績についても、散発的に報告されているのみで、主任研究者らが2011年に報告した19例の生体肺移植における検討が世界最多である(1)。その報告では、ある一定の条件を持った患者群では、有意に移植後の予後が良好であることが示された。しかしながら、国際的にも、数十例といった中規模の集団を対象にした報告は、これまでになく、HSCT後の肺移植の実態については不明であり、かつ予後因子についても不明である。
2.研究の目的
血幹細胞移植後の肺移植の実態を理解するために、これまでのデータを集めて、検討します。
3.研究の方法と研究機関名
2000年1月から2015年10月までの期間に、日本の肺移植実施施設9施設(東北大学、獨協医科大学、東京大学、千葉大学、京都大学、大阪大学、岡山大学、福岡大学、長崎大学)で施行された造血幹細胞移植後の肺移植症例(約60例)について、カルテなど既存の資料のみを用いた追跡による研究を行います。
4.個人情報の保護
この研究で得られた個人情報が外部に洩れることのないよう厳重に管理致します。本研究における各患者番号を新たに付し、患者さんの氏名やカルテ番号など個人が特定できるものはデータ管理において記載されません。また、研究成果の発表にあたっては、患者さんの氏名などは一切公表いたしません。
データの保管期間に関しては、本研究結果をもとに、今後、発展的な研究実施(本研究データの二次利用)の可能性があるため、論文化から少なくとも10年以上は厳重に保管させていただきますことをご了承ください。また、データを二次利用する際は、新たに倫理委員会で承認を受けた上で、再度研究への参加の意思を確認させていただくことになります。
また、本研究にデータを使用してほしくないという希望のある患者さんにおいては、ご希望に沿いたいと思いますので、以下の連絡先にご連絡いただければ、対応させていただきます。
さらに、本研究において、患者さんに、追加の費用負担は一切発生しませんし、謝礼もございません。
本研究に対するご質問、ならびに、個人情報に関する問い合わせや苦情等については、以下の窓口にて、対応させていただきます。また、本研究の研究計画書および研究の方法に関する資料の入手・閲覧をご希望される場合は、下記窓口にご連絡ください(ただし、他の研究対象者等の個人情報及び知的財産の保護等に支障がない範囲内に限られます)。
連絡先:京都大学呼吸器外科 (研究責任者 陳豊史)
住所:606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 医局
電話:075-751-4975
FAX:075-751-4974
連絡先:京都大学医学部附属病院 総務課 研究推進掛
電話:075-751-4899
E-mail:trans@kuhp.kyoto-u.ac.jp