肺癌治癒切除術後に生じた肺癌に対する手術症例のアウトカム調査
原発性肺癌は現在のところ日本における癌死の上位を占める癌腫です。その組織型や進行期分類により、外科的切除、化学療法、放射線療法を柱とした治療の適応が定められています。外科的切除術に関しては、一般的に進行度IA期からIIIA期までのものが適応となり、治癒の期待できる治療であると言えます。
しかし一方で、肺癌は比較的稀にではありますが同時性または異時性多発の形態をとることが知られています。さらには肺癌術後に新規に肺腫瘤を認めた場合、転移再発であるか新規に発生した癌であるかの判断は組織診断をもってしても不能であることが多く、その治療方法に関して一定の見解は得られておらず、選択に難渋することもしばしばあります。ともすれば十分に外科的切除可能な病変であっても、安易に転移再発疑いと判断されかねない状況のため、外科切除による治癒の機会を逸することにつながり、患者さんの損失は少なくないと考えられます。
これまでのところ肺癌治癒切除術後の新規肺腫瘍に対する外科的切除症例に関する報告はほとんどなされていません。そこで、当施設で後ろ向きに、肺癌治癒切除術後の新規肺腫瘍に対する外科的切除症例の生存率と無再発生存率を詳細に検討することにより、肺癌治癒切除術後の新規肺腫瘍に対する外科治療の有効性を明らかにすることが今回の目的であり、この研究結果を周知することで治療方針の選択に貢献できると考えています。
そのため、京都大学呼吸器外科では当科にて1999年以後に初回肺癌治癒切除術を受けられた患者さんのうち、術後に新たに発生した肺腫瘍に対して2012年までに外科的切除術を施行された方の臨床データを利用させていただくことといたしました。
これらの臨床データは通常に診療を受けていただく際に記録されるデータであり、特別に採血など患者さんに御負担いただいて収集するものではありません。また、過去の診療記録から得られた資料を用いますので、同意書は頂きませんが、患者さんは匿名化され、プライバシーは保護されています。患者さんには臨床データ利用の目的と趣旨をご理解いただきますようよろしくお願い申し上げます。このような臨床研究に対してご質問のある方は担当医師または当科データベース管理担当者(大政貢:075-751-4975)までお申し出ください。