京大呼吸器外科 京都大学医学部附属病院呼吸器外科

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トロント留学記

平成7年卒 大角明宏

 Toronto General Hospital, Thoracic Surgeryにて2017年1月からSurgical lung transplant fellowをしております大角明宏です。既に京都大学からはもちろん、多くの日本人呼吸器外科医が臨床肺移植のトレーニングをこの地で受けられておりますので今さらですが、簡単にその様子をお伝え致します。

 主な仕事としてはdonor runおよびrecipient手術の介助に参加します。同時に複数ドナーが発生することも非常に頻繁で、また時に人手が十分ではないこともあり、ドナー手術からレシピエント手術へそのまま入ることはもちろん、ドナーリカバリーやレシピエント手術が連続することもあります。これまでの9ヶ月間で、207例のdonor run、126例の移植手術(2例の心肺移植を含む)が行われました。

・ドナー手術:NDD donor(いわゆる脳死ドナー)のほか、DCD donor(controlled 心停止ドナー)、当院でトライアルが開始されたNPOD donor(uncontrolled 心停止ドナー)があります。Procurementはトロント近郊の病院はもちろん、オンタリオ州を含めたカナダ全土にまで及び、UNOSでdeclineされたUSAのケースまで出掛けます。手技に関してはトロント方式として確立された手技を学び、ドナー肺の評価および摘出を行います。ドナー数が多い割には、かなりmarginalなドナー肺まで使用され、レシピエントの状態も加味してその使用可否を判断して持ち帰ります。

・移植手術:Dr. Keshavjeeをはじめとしたstaff surgeon(現在8名)と共に、first assistant 或いはsecond assistant として手術に参加します。開閉胸、肺全摘、肺門のpreparation、吻合手技、central ECMO の確立などについて学びます。スタッフ間で微妙な違いがあるもののほぼ同様の手技で行われ、おおよその目標として、肺全摘を20分、肺門のpreparation を20分、吻合を1時間以内で終えるよう、多大なるpatience のもと懇切丁寧に指導頂きます。世界最高峰の施設でハイレベルの指導を受けることができるのは、至福の時間でもあり、また外科医として計り知れない財産です。移植手術と言えば「全摘して植えるだけやん」と単純にとらわれがちですが、症例によっては難易度も高く、手技を習得する上で興味が尽きることは全くありません。また、比較的頻繁に行われる再移植手術、術前から既にExtracorporeal Life Support(ECLS)が導入されているbridge case、心肺移植などは日本ではあまり目にかからないだけに、手術だけでなく術前管理、評価、術後管理に至るまで全ての症例が非常に貴重で勉強になります。どのようなconfiguration で術中・術後に呼吸循環補助を行うのか個々の症例によっても異なる点も多々あり、勉強することには事欠かない環境です。

移植と共に我々にとって重要な仕事はECLSの導入および管理です。肺移植手術にECLSは欠かせない手技ですが、術前から導入されるbridge case、術後のPGDや呼吸不全に対して行われるcase for recovery、院内他科発生の呼吸不全、院外に出向し導入して患者を連れて帰るremote ECLS case など、頻繁に機会があります。

移植がないときには、毎朝ICUにて行われるECLS roundに参加、ECLS管理についてのdiscussionを行います。移植術後患者を回診し、必要に応じて、ドレーンの抜去・挿入、気管支鏡、気管切開といった外科的処置を行います。ほか、外来から外科的処置のコンサルト、外来患者の気管支鏡、Lung Volume Reduction Surgery外来の手伝いなども定期的に行います。ミーティングも様々行われており、Inpatient meeting、レシピエント移植リスト登録のミーティング、ドナー評価ミーティングのほか、スタッフによる講義なども行われます。

私個人の経験としては、9か月終了時点までに、87例のdonor run、69例の移植手術(32例の吻合)に参加することができ、非常に有意義なトレーニングを受けることができました。残された時間を悔いなきよう、引き続き貪欲に学びたいと思っております。

最後になりましたが、今回の留学にあたり、まず初めにリサーチフェローとしてDr. Cypel Labに御紹介頂きました京都大学の陳先生、リサーチフェローからの長期の留学をお許し下さった伊達教授にはこの場を借りて深く御礼申し上げます。

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